「一人親方は法人化したほうがいいのかな?」
「法人化するとどんなメリットがあるんだろう?」
「法人化するタイミングも迷う…」
こんなお悩みを解決する記事です。
本記事では一人親方が法人化するメリットとデメリット、法人化するタイミングをまとめています。
これから法人化しようと考えている一人親方や、将来的に独立して法人化を考えている方はぜひご覧ください。
目次
一人親方が法人化する3つのメリット
一人親方の中には、法人化を検討している人も多いでしょう。
しかし、法人化にはメリット・デメリットがあります。
まずはメリットを紹介しますのでご覧ください。
- 節税効果が高い
- 事業拡大しやすい
- 仕事の受注が増える可能性がある
節税効果が高い
法人は個人事業主よりも節税効果が高い傾向にあります。
法人税の税率は個人の所得税よりも低く設定されているためです。
下記は2023年の法人税率です。
課税所得金額 | 税率 |
---|---|
0円 から 800万円 | 15% |
800万円 以上 | 23.2% |
それに対し、個人事業主の場合は下記のようになります。
課税所得金額 | 税率 | 税額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
(出典|国税庁 No.2260 所得税の税率)
課税所得金額が800万円を超えると税率が引き上げられるため、節税効果が小さくなる可能性があるので注意が必要です。
また、損失が出た場合でも一定期間繰り越せる制度が設けられており、赤字の年に納めた税金を黒字の年に還付できます。
事業拡大のしやすさ
法人化すると事業拡大しやすくなる傾向にあります。
理由は主に下記の3つです。
資金調達が容易
法人は銀行や投資家からの融資を受けやすいため、事業拡大に必要な資金を調達しやすいです。
また、株式を発行して資金を集めることもできます。
社会的信用が高い
会社法などの法律に基づいて運営されるため、取引先や金融機関からの信頼を得やすく事業拡大に有利に働きます。
組織体制を整えやすい
株式会社や合同会社など、さまざまな組織体制を整えられるため、事業拡大に必要な人材や設備を調達しやすくなります。
事業拡大を検討している場合は、法人化を検討してみるのも良いでしょう。
仕事の受注が増える可能性がある
法人は社会的信用が高いため、仕事の受注が増える可能性があります。
法人は個人事業主よりも、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなるからです。
大手企業や金融機関は取引先の社会的信用を重視する傾向があるので、法人化することで企業や金融機関からの受注を獲得しやすくなる可能性があります。
一人親方が法人化するデメリット
次に法人化のデメリットを見ていきます。
- 定款の作成や登記手続きが必要になる
- 費用がかかる
- 事務作業が増える
- 社会保険の加入が必要になる
定款の作成や登記手続きが必要
法人化するには、定款の作成や登記手続きが必要です。
定款は法人の基本的なルールを定めたもので、登記は法人として登記簿に記載されることを指します。
定款の作成は専門知識がいることもあり、自分の力だけで作成するのは困難です。
したがって、会社設立時に必要な書類を作成できるサービスの利用や専門家に依頼すると手間を省けるでしょう。
費用がかかる
法人設立には費用がかかります。
まず、株式、合同会社問わず「法定費用+資本金+会社印鑑や印鑑証明書費用」がかかります。
どのくらい費用が必要かは会社規模にもよるので、一概に◯◯円という数字はだせません。
あくまでも目安ですが、会社設立にかかる法定費用は下記のようになります。
費用項目 | 金額 |
---|---|
収入印紙代 | 4万円 |
定款の認証手数料 | 3~5万円 |
謄本の発行手数料 | 約2千円 |
登録免許税 | 一般的には15万円 |
資本金に関しては、会社形態によって変わってきますので、事業内容に合わせた金額が必要です。
会社印鑑、印鑑証明書などの費用の目安は下記のとおり。
費用項目 | 金額 |
---|---|
印鑑代金 | 約100〜10,000円 |
印鑑登録料 | 一般的に1,000円程度 |
印鑑証明書 | 一般的に約100〜1,000円 |
株式会社より合同会社のほうが手続きが簡単なため、費用を抑えられる傾向にあります。
ちなみに電子定款の場合も、費用を抑えられる傾向にあります。
また、設立後は、社会保険料、税金、決算公告費用、株主総会費用もかかるので、法人設立を検討する際には十分に検討する必要があります。
事務作業が増える
法人設立後は、個人事業主と比べて事務作業が増えます。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
【決算書の作成】
決算書とは、1年間の経営成績や財政状態をまとめた書類です。
法人は、毎年決算書を作成し、税務署に提出する必要があります。
決算書の作成には、簿記の知識やスキルが必要です。
【議事録の作成】
議事録とは、会議の内容を記録した書類です。
法人は、株主総会や取締役会などの会議を開催する場合、議事録を作成し、保管しておく必要があります。
議事録の作成には、正確さと簡潔さが求められます。
【社会保険料の手続き】
法人は、従業員を雇用する場合、社会保険料を納める必要があります。
社会保険料の手続きは、複雑で手間がかかります。
【税務申告】
法人は、毎年税務申告を行う必要があります。
税務申告には、決算書や領収書などの書類が必要となります。
税務申告は、専門知識や経験が必要となるため、税理士に依頼するケースも多いです。
上記に加えて、以下のような事務作業も増える可能性があります。
- 請求書や納品書の発行・管理
- 顧客管理
- 在庫管理
法人設立後は、これらの事務作業を効率的に行うための体制を整えることが重要です。
社会保険の加入が必要
法人の役員は、原則として厚生年金保険や健康保険に加入する必要があります。
個人事業主が任意加入となっている社会保険の加入が義務化されるからです。
従業員を雇う場合、厚生年金や健康保険料の半分を負担しなければならず、従業員の給与額によって社会保険料の額が決まります。
また、社会保険の加入手続きや、社会保険料の納付手続きなども必要となるため、事前に確認しておくことが重要といえます。
一人親方が法人化するタイミングや判断基準
法人化のタイミングは、下記のようなものが挙げられます。
- 売上が一定額を超えたとき
- 従業員を雇用するようになったとき
- 事業拡大を検討しているとき
売上が一定額を超えたとき
個人事業主が法人化するタイミングとして、売上が一定額を超えたときが挙げられます。
その理由は、法人化による節税効果が大きくなる可能性があるためです。
法人税率は、個人事業主の所得税率よりも低く、また、法人税には所得控除や優遇措置が適用されます。
一方、個人事業主の所得税率は所得金額に応じて段階的に上昇し、課税所得が900万円を超えると所得税率は40%にもなります。
したがって、法人化した方が税金が安くなる可能性があります。
従業員を雇用するようになったとき
一人親方が従業員を雇用するようになった場合、労務管理の負担が大きくなります。
従業員を雇うと、採用から配置、異動、人材の育成、賃金や労働時間の管理などの労務管理を行う必要があるからです。
そのため、一人親方が従業員を雇用するようになった場合、法人化して労務管理を任せられる専門家を雇うことで、労務管理の負担を軽減することができます。
事業拡大を検討しているとき
個人事業主が法人化するタイミングとして、事業拡大を検討しているときが挙げられます。
その理由は、法人化することで資金調達が容易になり、取引先からの信頼を得やすくなるからです。
法人は、個人事業主よりも信用力が高く金融機関や投資家からの融資を受けやすいため、事業拡大のための資金調達が容易になります。
また、法人は、個人事業主よりも安定した経営基盤を有していると考えられるため、取引先からの信頼を得やすくなります。
まとめ:一人親方の法人化は慎重に判断しましょう
法人化を考えている一人親方は、メリットとデメリットを比較して検討してみてください。
売上や事業の将来性、資金調達の必要性、労務管理の体制などを考慮して、慎重に判断し、わからないことは専門家に相談して、より具体的な情報を収集するようにしましょう。
法人化は、一人親方にとって大きな決断です。
慎重に検討して、最適なタイミングで行うようにしましょう。
下記記事では建設業で独立した場合の年収や開業資金について解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。