『造園施工管理技士』とは、建設業の特定業種の技術を認定する施工管理技士のひとつで、国土交通省が管轄する国家資格です。
造園に関する最高度の技術者である造園施工管理技士は、造園の立案から計画図の製作、施工、品質および安全の管理などを一手に引き受けることができます。造園とはいっても「造園技能士」の資格とは性質が異なり、職人の技術を認定する資格ではなく、設計から施工に至るまでの一連の管理監督をおこなう技術者を対象としています。
1級を取得すると、営業所ごとに必置が義務づけられている専任の技術者、あるいは工事現場ごとに必ず配置しなければならない主任技術者および監理技術者になることができます。
また、造園施工管理技士の資格を取得すると「社会保険労務士」の受験資格を得ることもできます。
本記事で、造園施工管理技士の受験資格や実務経験内容、試験スケジュール、取得するメリットまで詳しくお伝えしますので、ぜひご覧ください。
目次
造園施工管理技士の受験資格や実務経験とは
造園施工管理技士には1級、2級共に、第一次検定と第二次検定があり、受験する際はそれぞれの受験資格や実務経験を知っておく必要があります。
ここでは、令和6年度からの受験資格と実務経験をお伝えします。
第一次検定については実務経験の指定はなく、一定年齢を超えている方なら誰でも受験できます。
2級 | 17際以上(受験年度末時点での年齢)従前から変更なし |
1級 | 19際以上(受験年度末時点での年齢) |
二次検定は実務経験が必要ですが、これまで必要だった学歴は問われなくなりました。
2級、1級で受験資格や実務経験年数が異なりますので、それぞれ解説していきます。
2級造園施工管理技士の受験資格
造園施工管理技士2級の第二次検定は、下記の受験資格と実務経験年数が必要です。
受験資格要件 | 実務経験年数 |
令和3年度以降の1級第一次検定合格者 | 合格後、1年以上の実務経験年数 |
令和3年度以降の2級第一次検定合格者 | 合格後、3年以上の実務経験年数 |
技術士第二次試験合格者(土木施工管理者のみ) | 合格後、1年以上の実務経験年数 |
※第二次検定に関しては、令和6年度から令和10年度の間は、新受検資格と旧受検資格のどちらかの受検資格に該当する実務経験により受検可能です。
旧受験資格については全国建設研修センターをご覧ください。
1級造園施工管理技士の受験資格
造園施工管理技士1級の第二次検定は下記の、受験資格要件と実務経験年数が必要です。
受験資格要件 | 実務経験年数 |
令和3年度以降の1級第一次検定合格者 | 合格後、5年以上の実務経験年数 合格後、特定実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験年数 合格後、監理技術者としての1年以上の実務経験年数 |
2級第二次検定(旧実地試験含む)に合格した後、1級、第一次検定に合格した者(1級、第一次検定受検予定者を含む) | 2級合格後、5年以上の実務経験年数 2級合格後、特定実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験年数 |
技術士第二次試験合格者(土木施工管理技術者のみ) | 合格後、5年以上の実務経験年数 合格後、特定実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験年数 |
※第二次検定に関しては、令和6年度から令和10年度の間は、新受検資格と旧受検資格のどちらかの受検資格に該当する実務経験により受検可能です。
旧受験資格については全国建設研修センターをご覧ください。
受験資格の実務経験とは
造園施工管理技士の場合、実務経験に該当する範囲は、造園工事業になります。
造園工事業とは、主に以下の工事が該当します。
- 植栽工事(植栽を復元する工事も含む)
- 地被工事
- 樹木整姿工事
- 水景工事(池・滝・流れなど)
- 景石工事(石組み・石積など)
- 地ごしらえ工事
- 公園設備工事(花壇、噴水、休憩所、遊戯施設など)
- 広場工事
- 屋上等緑化工事
- 緑地育成工事
- 休養施設工事
- サービス施設工事(ベンチ・テーブルなど)
- 運動施設工事
特定実務経験は、通常の実務経験に加えて、次の条件を満たす経験です。
- 建設業法の規定に該当する建設工事で行われた経験であること
- 工事の請負金額が4,500万円以上であること(建築工事の場合は7,000万円以上)
- 監理技術者または主任技術者の指導の下で、または自身が監理技術者または主任技術者として、施工管理を行った経験であること
一方で、監理技術者補佐としての経験は、以下の条件を満たす場合に該当します。
- 特例監理技術者の指導のもとで、1級第一次検定に合格した後、1つの工事現場で専任の役割を果たした場合。ただし、単なる補助作業は含まれない。
受験前に、あなたがどの実務経験に該当するのか考えてみましょう。
最短で造園施工管理技士になるには何年かかる?
最短で造園施工管理技士になるには何年かかるのでしょうか。
本記事では、未経験から始めた場合の最短年数をご紹介します。
【未経験から2級造園施工管理技士になる最短ルート(3年)】
- 第一次検定に合格
- 3年間の実務経験を積み、第二次検定に合格
【未経験から1級造園施工管理技士になる最短ルート(5年)】
- 2級第一次検定に合格
- 特定実務経験1年以上を含む5年以上の実務経験年数を積み第二次検定に合格
このようになり、未経験からだと1級合格まで8年かかることになりますね。
しかし、最短で造園施工管理技士になるには、検定に1発で合格する必要があります。
そこで本章で、勉強を始めるタイミングや勉強方法をお伝えするので、参考にしてみてください。
いつから勉強を始めるか
造園工事会社に入社したタイミングで受験勉強を始めればOKです。
入社後すぐに、造園施工管理技士の資格取得を目指す意向を上司や人事部に伝え、サポートを受けることができるか確認しましょう。
現場で実務経験を積みながら、検定試験の勉強も並行して行うと効果的です。
日々の業務で学んだ知識と、試験対策の勉強を並行して進めることで、理論と実務の両面で知識を身につけることができるからです。
わからないことは、造園施工管理技術者の資格を持つ先輩に質問し、アドバイスを受けましょう。
どのように勉強するか
まず、造園施工管理技士の参考書で基礎知識や単語を習得しましょう。
「知識や単語は工事現場で身に付けられるので、過去問題だけ解けばいい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、工事現場では独自の呼び方で単語を使っていることが多いため、やはり参考書で正式な単語を身につけるべきでしょう。
基礎知識が身についてきたら、過去の試験問題を解いて試験の出題形式や難易度を把握します。
間違えた問題や理解できなかった問題については、徹底的に復習し、理解を深めましょう。
心理学者のヘルマン・エビングハウスによると、人は20分で42%のことを忘れてしまうそうなので、忘れがちなポイントや難解な問題に特に焦点を当てて復習することも重要です。
同僚や友人と一緒に勉強会を開いたり、勉強グループを作ることで、励まし合いながら効率的に勉強を進めることができますよ。
ちなみに、スマートフォンにダウンロードできる学習アプリもあります。仕事のスキマ時間に学習できて便利なので、通常の勉強とアプリを併用するのも良いでしょう。
また、オンライン講座は費用と受講時間が掛かってしまいますが、映像講義で学べるのが利点です。動画の記憶定着率はテキストの2倍とも言われていますので、オンライン講座で学ぶことも考えてみましょう。
造園施工管理技士の試験スケジュール
造園施工管理技士を受験する際は、スケジュールを把握し試験日に向けて行動していきましょう。
施工管理技士の試験は、毎年だいたい同じ時期に開催されますが、本記事では、令和6年度の造園施工管理技士の
- 申込期間
- 試験日
- 合格発表日
を1級、2級に分けてそれぞれお伝えしますので、参考にしてみてください。
2級造園施工管理技士の試験スケジュール
令和6年度(2024年度)の2級造園施工管理技士の試験スケジュールは以下の通りです。
【試験日】
2級第一次検定 (前期) | 令和6年6月2日(日) |
2級第一次検定 (後期) | 令和6年11月17日(日) |
2級第二次検定 | 令和6年11月17日(日) |
【申込受付期間】
2級第一次検定 (前期) | 令和6年3月6日(水)~ 3月21日(木) |
2級第一次検定 (後期) | 令和6年7月9日(火)~ 7月23日(火) |
2級第二次検定 | 令和6年7月9日(火)~ 7月23日(火) |
【合格発表】
2級第一次検定 (前期) | 令和6年7月2日(火) |
2級第一次検定 (後期) | 令和7年1月6日(月 |
2級第二次検定 | 令和7年3月5日(水) |
1級造園施工管理技士の試験スケジュール
1級造園施工管理技士の試験スケジュールは以下のとおりです。
【試験日】
1級第一次検定 | 令和6年9月1日(日) |
1級第二次検定 | 令和6年12月1日(日) |
【申込受付期間】
1級第一次検定 | 令和6年5月7日(火)~ 5月21日(火) |
1級第二次検定 | 令和6年5月7日(火)~ 5月21日(火) |
【合格発表】
1級第一次検定 | 令和6年10月3日(木) |
1級第二次検定 | 令和7年3月5日(水) |
造園施工管理技士を取得するメリット
造園施工管理技士の資格を取得すると、造園業界での職務遂行能力が高まりキャリアアップにつながる可能性が広がるだけでなく、顧客からの信頼獲得にも大きく寄与するでしょう。
もう少し詳しく見ていきます。
専門知識の習得
造園施工管理技士の資格を取得することで、植物学、土壌学、造園設計などの専門知識が深まります。
これらの専門的な知識は、公共の公園や庭園、さらには都市計画における緑化計画など、さまざまな工事で役立つでしょう。
資格取得の過程で学ぶ技術は、現場でのトラブル対応能力や管理能力の向上にも直結します。
また、資格があることで、クライアントや雇用主からの評価が高まり、仕事の幅が広がることも大きな利点です。
キャリアアップと収入の増加
造園施工管理技士としての資格を持つことは、職場内外でのキャリアアップに直結します。
管理職への昇進やより大規模な工事への参加など、責任のある仕事を任される機会が増える可能性が高まります。
さらに、資格を持っていることが条件の求人が多いので、転職する際の選択肢の幅が広がり、収入増加へとつながる可能性も高まります。
具体的には、公的なプロジェクトや民間企業の大型案件に関わることができるようになるので、就業条件の改善や収入アップが見込めるのです。
また、専門家としての自己実現を果たすことができ、仕事に対する満足感や達成感も大きくなることでしょう。
造園施工管理技士を取得するとできる仕事
造園施工管理技士は、景観の美しさと環境の健全性を両立させる重要な役割を果たします。
この資格を持つことで、公共施設や私有地の緑化計画から実施、管理まで広く関わることが可能となり、持続可能な環境造りに寄与することができます。
具体的には、下記の仕事ができるようになります。
造園計画の策定
自然景観を生かしながら、人々が安全かつ快適に過ごせる環境を作り出す計画を策定します。
例えば、公園や庭園の設計では、様々な植物の特性を考慮した植栽計画や、訪れる人々の動線をスムーズにするための遊歩道の路線設定などが求められます。
施工監理と品質管理
工事が計画通りに進行しているかを常にチェックし、問題があれば適切な対応を行います。
また、使用される植物や材料の品質が基準を満たしているかなどの品質管理も行います。
造園工事の計画・実施・監理
クライアントからの要望を基に造園工事の全体計画を立て、予算やスケジュールの管理を行います。実施段階では、設計図に基づき、適切な植栽や施設の配置を行い、工事が安全に進むよう現場の監督を担います。
また、1級施工管理技士の取得で、営業所ごとに配置される専任の技術者や、工事現場ごとに配置される主任技術者および監理技術者になることができます。
主任技術者と監理技術者の仕事内容や2つの違いについては、下記の記事で詳しくまとめていますので、気になる方は合わせてご覧ください。
まとめ:造園施工管理技士は未経験でも取得可能!あなたもキャリアスタート
今回は、造園施工管理技士になるための受験資格や実務経験について詳しく解説しました。
造園施工管理技士の資格は、専門知識の習得やキャリアアップ、収入増加などさまざまなメリットがあり、業界未経験のあなたでも、造園工事会社に就職すればキャリアをスタートさせられます。
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