「玉掛け資格って何?」
「クレーン作業に必要な資格や講習の内容が知りたい」
「資格取得の流れや費用が分からない」
など、現場で働く方やこれから建設業界を目指す方は、こんな疑問をお持ちではないでしょうか。
玉掛け資格は安全な現場づくりに欠かせない国家資格であり、取得には正しい知識と手順が求められます。
この記事では、玉掛け資格の基本から取得方法、現場で役立つ知識、安全対策、関連資格まで解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
玉掛けとは何か?基本知識と作業の重要性

玉掛けとは、クレーン作業において荷物を安全に持ち上げるために欠かせない基本作業です。
玉掛けの正しい知識と技術を身につけることは、現場での事故防止や効率的な作業のために不可欠です。
具体的に玉掛けがどのような作業なのか、詳しく見ていきましょう。
荷を安全につり上げるための作業
玉掛けは、クレーンや移動式クレーンなどを使って荷物をつり上げる際に、ワイヤロープやチェーンなどの玉掛け用具を用いて荷をフックに掛けたり外したりする作業です。
荷の重量や形状に応じて適切な用具を選び、正しい方法で玉掛けを行うことが求められます。
玉掛け作業は、荷の落下や転倒などの重大な労働災害を防ぐために非常に重要な役割を担っています。
クレーン作業に欠かせない役割
クレーン作業では、玉掛け作業者が荷の安全なつり上げと移動を担います。
合図者やクレーン運転士と連携しながら、現場全体の安全を確保することが重要。
玉掛け作業が適切に行われない場合、吊り荷の落下や接触事故などのリスクが高まるため、必ず資格保持者が適切なルールに基づいて作業を行う必要があります。
資格が必要となる理由
玉掛け作業は、労働安全衛生法により資格取得が義務付けられています。
資格を持たない作業者が玉掛け作業を行うと、重大な労働災害につながる恐れがあるからです。
仮に、資格を持たずに玉掛け作業を行った場合、作業を行った本人には「50万円以下の罰金」が科されます。
また、無資格者に作業をさせた事業者や指示した者には「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます
玉掛け資格の種類と技能講習の内容

玉掛け資格は、現場で安全に玉掛け作業を行うために不可欠なものです。
法令で定められたカリキュラムを修了、または試験に合格することで玉掛け資格が取得できます。
ここからは、技能講習が必要となる具体的なケースについて説明します。
「玉掛け技能講習」と「玉掛け特別教育」
玉掛け資格には「玉掛け技能講習」と「玉掛け特別教育」の2種類があります。
資格区分 | 対象となる作業 | 従事できるクレーン作業 |
---|---|---|
玉掛け特別教育 | 特別教育が必要 | 1トン未満のクレーンでの玉掛け作業 |
玉掛け技能講習 | 技能講習修了が必要 | 1トン以上のクレーンでの玉掛け作業 |
扱う荷物の重さによって必要な玉掛け資格が異なり、重い荷物を扱うほど高度な資格(技能講習)が必要になります。
講習時間と受講条件
資格区分 | 講習時間・日数 | 主な講習内容・ポイント |
玉掛け特別教育 | 学科:5時間実技:4時間合計:9時間(2日間) | ・吊り上げ荷重1トン未満の作業が対象・クレーン等の基礎知識、力学、玉掛け方法、関係法令・実技は玉掛け作業と合図・修了試験なし |
玉掛け技能講習 | 学科:12時間実技:7時間合計:19時間(3日間) | ・吊り上げ荷重1トン以上の作業が対象・クレーン等の知識、力学(免除あり)、玉掛け方法、関係法令・実技は玉掛け作業と合図・学科・実技とも修了試験あり |
特別教育の受講資格は特にありません。
技能講習も、18歳以上であれば誰でも受講可能です。
クレーン運転士免許や関連資格を持っている場合は一部科目が免除されることがあります。
実技試験の概要とポイント(技能講習)
技能講習の最終日には実技試験が行われます。
実技試験では、玉掛け用具の選定や正しい玉掛け方法、合図の出し方、安全確認などが評価されます。
学科試験と実技試験の両方に合格することで、修了証が交付されます。
実技では、正確な手順と安全意識が重視されます。
合格率
「玉掛け技能講習」と「玉掛け特別教育」の合格率は、90%以上です。
全国平均では、96~98%程度と非常に高い水準です。
しっかり講習を受けて内容を理解すれば、ほとんどの受講者が合格できます。
玉掛け資格の取得方法と費用の目安

玉掛け資格を取得するには、指定された講習機関で所定のカリキュラムを受講し合格しなければならないことをお伝えしました。
カリキュラムの受講にあたっては、受講場所や費用、助成金の利用可否なども事前に確認しておくことが大切です。
どこで受講できる?講習機関の探し方
玉掛け技能講習は、各都道府県の労働局長登録教習機関、労働基準協会、クレーン協会、教習所などで実施されています。
受講希望者は、最寄りの教習所や協会の公式サイトで事前に申し込みを行います。
必ず受講する前に公式サイトで、日程や費用、申込み方法を確認しましょう。
費用の相場と助成金の利用
玉掛け技能講習の費用は、2万円から4万円程度が相場です。
特別教育の場合は、1万5千円から2万円程度です。
受講料のほかにテキスト代が必要な場合もあります。
労働災害を防ぐために知っておきたいこと

玉掛け作業にはつり荷の落下や接触事故など、重大な労働災害のリスクが常に伴います。
労働災害を未然に防ぐためには、作業手順や安全ルールを守るだけでなく、作業開始前の危険予知活動や用具の点検、現場全体での安全意識の共有が不可欠です。
ここでは、作業現場での事故の原因やルールについて学び、特別教育や技能講習で重点的に学習しておきたいことや注意点をお伝えします。
事故の主な原因
玉掛け作業における事故の主な原因は、用具の選定ミスや誤ったつり方、作業周囲の確認不足、合図の誤りなどです。
対策としては、有資格者による作業の徹底、用具の点検、作業計画の作成、作業員への安全教育が挙げられます。
荷の下への立ち入り禁止や、作業手順の順守も重要です。
技能講習や特別教育では「事故が起こりやすいポイント」を具体的に学び、実践的な安全管理へつなげていきましょう。
安全荷重と指差呼称の徹底
玉掛け用具には安全荷重が定められており、吊り荷の重量を超えない用具を選ぶ必要があります。
作業時には指差呼称を徹底し、合図や確認を確実に行うことで、ヒューマンエラーを防ぎます。
現場全体で安全意識を高めることが事故防止につながります。
各玉掛け用具(ワイヤロープ、ベルトスリング、シャックル等)には「安全荷重」が定められています。
講習では、吊り荷の重量やバランス、用具の点検方法とともに、「安全荷重の読み方」と「その範囲を絶対に超えない選定と使用方法」を徹底的に学びましょう。
また、玉掛け作業時は必ず「指差呼称」(指さし・声出し確認)を徹底します。
講習では、合図の出し方・受け方、作業各段階で確認すべきポイント、「吊り点よし!」「玉外しよし!」といった指差呼称を徹底しましょう。
保護具の着用とルールの徹底
玉掛け作業時には、ヘルメットや安全帯、作業服、安全靴などの保護具を正しく着用することが必須です。
現場では、ちょっとした油断や不注意が大きな事故につながることがあるため、基本ルールの徹底が重要です。
保護具の着用は、個人の安全だけでなく、周囲の作業員の安全にも直結します。
保護具の着用を怠ると、事故発生時の被害が拡大する恐れがあり、現場全体の安全を損なう要因にもなります。
したがって、保護具の着用と基本ルールの順守を徹底することが講習でも重要になります。
安全衛生責任者が中心になり連携を取る
玉掛け作業は、労働安全衛生法や関連ガイドラインに基づき、厳格な安全管理が求められます。
現場では、安全衛生管理者や作業主任者が中心となります。
作業開始前の用具点検や安全装備の着用、作業計画の作成、定期的な安全教育などを徹底し、作業員同士が連携して安全な作業環境の確保に努めなければなりません。
講習では、自分がどんな立場・責任を担うのかを意識しながら受講することが重要です。
玉掛け資格が役立つ職場とは?

玉掛け資格は、建設業をはじめ、さまざまな現場で必要とされる国家資格です。
どんな現場で役立つのか詳しく見ていきます。
建設業での活用例
建設現場では、鉄骨やコンクリート部材など重量物の搬入・設置作業が多く、玉掛け資格を持つ作業員が不可欠です。
安全かつ効率的な作業を実現するため、現場ごとに有資格者の配置が求められています。
重機を使用する現場では、玉掛け作業が日常的に発生します。
クレーンや移動式クレーン、フォークリフトなどの重機と連携しながら、安全な荷役作業を行うために玉掛け資格が活かされています。
製造業・物流現場でもニーズあり
製造業や物流現場でも、重量物の搬送や積み下ろし作業に玉掛け資格が求められます。
製造工場では、大型の機械部品や製品、原材料などの重量物をクレーンやホイストで移動・搬送する場面が多く、玉掛け作業が日常的に発生します。
例えば、自動車工場ではエンジンやボディパーツの搬送、鉄鋼・金属加工工場ではコイルや鋼板、金型の移動など、ほぼすべての工程で玉掛け作業が必要とされています。
物流倉庫でも、パレット積みされた重量物や大型荷物の積み下ろし、トラックへの積載・荷下ろしなどにクレーンを使うことがあるので、玉掛け資格が必要になります。
玉掛け資格と相性の良い関連資格

玉掛け資格は、単独での取得だけでなく、他の関連資格と組み合わせることで現場での活躍の幅が大きく広がります。
複数の資格を取得することで、多様な作業環境や重機操作に対応できる人材として高く評価されます。
また、現場の安全管理や作業指導を担う作業主任者へのキャリアアップも目指せます。
クレーン運転士との併用で業務の幅が広がる
クレーン運転士(クレーン・デリック運転士免許)は、つり上げ荷重5トン以上のクレーン(天井クレーン、ジブクレーン、橋形クレーン、アンローダなど)を運転する際に必要な国家資格です。
年齢要件は満18歳以上となっており、実技教習を修了後、各地域の安全衛生技術センターで学科試験を受験します。
玉掛け資格とクレーン運転士免許を併せ持つことで、荷のつり上げから運転まで一貫して対応できるようになります。
現場での業務範囲が広がり、より高い専門性が求められるポジションで活躍できる可能性が高まります。
フォークリフト・高所作業車との関係性
フォークリフト運転技能講習は、最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転するために必要な国家資格です。
18歳以上であれば受講でき、講習内容は学科と実技に分かれており、両方の修了試験に合格すると修了証が交付されます。
基本的な受講資格は年齢が18歳以上であることです。
この、フォークリフト運転技能講習や高所作業車運転技能講習は、現場での安全作業に欠かせない資格です。
玉掛け資格と併せて取得することで、さまざまな重機や作業環境に対応できる人材として評価されます。
高所作業車の資格については下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
作業主任者のステップアップにも
玉掛け資格は、作業主任者や現場監督へのステップアップにも役立ちます。
現場の安全管理や作業指導を担う立場になるためには、玉掛けをはじめとした各種資格の取得が重要です。
例えば下記の資格がおすすめです。
資格の種類 | 対象となる主な作業・業種 |
---|---|
土木施工管理技士・建築施工管理技士 | 工事全体の進行・安全を総合管理 |
足場の組立て等作業主任者 | 足場の組立・解体 |
型枠支保工組立て等作業主任者 | 型枠や支保工の組立や解体 |
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者 | 掘削工事、土留め支保工 |
はい作業主任者 | 高所はい付け・はい崩し |
どんな資格や免許を取得するかは、作業する環境や工事の種類によって異なります。
作業する環境や仕事内容をしっかり把握し、「現場に必要な資格」を見極めてステップアップを考えることが、キャリアアップの第一歩です。
まとめ:玉掛け資格を取得して安全な現場づくりを目指そう

玉掛け資格は、クレーン作業や重機作業に欠かせない国家資格です。
特別教育や技能講習を受講し、学科・実技試験に合格することで取得できます。
カリキュラムでは、正しい玉掛け方法や安全ルール、仲間との連携方法を学ぶことが重要。
玉掛け作業を行う予定のある方は、労働災害を防ぐためにも、しっかりと「特別教育」「技能講習」を受講しましょう。
なお、造園・外構・土木業界で活躍したい方は、GARDEN-JOBへの登録をおすすめします。
GARDEN-JOBでは、造園職人や外構職人、施工管理技師など専門職の求人情報を多数掲載しています。
会員登録で企業とのメッセージや応募履歴の確認など便利な機能が利用できます。
ぜひGARDEN-JOBに登録して、あなたの理想のお仕事を見つけてください。