基礎工事は非常に重要な土木工事です。

住宅や高層ビルからダムや橋梁まで、地盤上につくられる、ありとあらゆる建築物や土木構造物には「基礎」があります。基礎のない建物は不安定で、すぐに倒れたり崩れたりしてしまうでしょう。

地震や台風など、自然災害の多いわが国では、特に基礎に対して高い安全性が求められているのが現状です。

どのような基礎にするかは、建物や施工の条件、地盤の状態など様々なデータを積み上げて検討されます。

基礎の重要性や施工のポイント、基礎の種類、基礎工事の仕事をする上で必要となる資格について紹介します。

高杉 有希子
監修者 エクステリアプランナー 高杉 有希子

静岡県御殿場市の土建屋に生まれ、大型重機が大好きな子供時代を送る。
建築に憧れ、三重短大で住環境を学ぶ。新卒でハウスメーカーFC工務店の「インテリアプランナー」に応募するも、社長の勘違いで募集したかったのはなんと「エクステリアプランナー」!!
ハウスメーカーで個人住宅のエクステリアを担当。その後、ゼネコン住宅事業部のインテリアプランナー、植木屋の外構プランナーを経て、現在は(株)ガーデンメーカーで営業設計を務める。

執筆者 お庭の窓口(転職情報)編集部

お庭の窓口転職情報の編集部です。 社内の造園・外構のプロたちから助言をいただきつつ、皆様に有益な情報を提供できるように頑張ります。

目次

基礎工事の重要性と施工のポイントについて

大型建築物の基礎工事

基礎は地盤中にあり、建物や構造物が建ち上がってしまうと見えなくなるので、一般の方の基礎工事に対する認知度は低いと言えるでしょう。

しかし、基礎工事を担う土木会社で働く人たちは、重要な仕事を任されているという誇りとやりがいを持って仕事に臨んでいます。

ここでは、基礎工事の重要性と施工のポイントについて見ていきます。

基礎工事の重要性

基礎とは、建物と地盤をつなぐ土台のことで、コンクリートや鉄骨、鋼管や耐火集成材などでつくられます。

基礎は、建物と地盤、双方の条件や特徴に合わせた適切な構造や大きさをしていなければなりません。基礎が適切でないと、建物は斜めになったり倒れたりしてしまいます。

不適切な基礎の上に建てられた不安定な建物は、そこで生活する人の生命や財産を危険にさらすことになるのです。

地盤中の基礎には、建物の自重と外的な力(風圧・降雨・積雪など)が常に加えられているため、頑丈であると同時に自然界の作用に対して柔軟であることも求められます。

そのため土木会社では、より安全で低コストの基礎工事を目指して、常に新しい技術や材料が研究・開発されています。

基礎工事の施工のポイント

基礎工事の施工のポイントとして、一番に挙げられるのは、建物を支えるのに十分な支持地盤に「どのような基礎構造物をつくるか」を設計することです。

それにはまず、現地の地盤はもちろん、環境条件の調査が欠かせません。固定・積載・積雪・風・地震などの荷重で、建築・土木構造物にどのような応力(構造物の内部に働く抵抗力)が発生するのかを見極めなければならないのです。

それを建築・土木構造物の構造計算と連動させて、最適な基礎を設計します。その設計に基づいて施工されるのが、基礎工事なのです。

基礎工事の種類とそれぞれの特徴

工事の骨組み

基礎の種類と特徴について見ていきましょう。基礎の種類には、大きく分けて、「直接基礎」と「杭基礎」があります。

計画する建築・土木構造物を支えることができる頑丈な地盤が、地表面から浅いところにある場合に施工するのが「直接基礎」です。

浅いところに頑丈な地盤がなく、深いところにある頑丈な地盤まで、地中に柱のような杭を打ち込んで支持地盤とするのが「杭基礎」になります。

「直接基礎」は、さらに、「ベタ基礎」「布基礎」「独立基礎」に分けることができます。

ベタ基礎

ベタ基礎は、鉄筋を入れたコンクリートで、建物の底面を一体的に支える基礎です。大きな面で建物の荷重を支えるので、荷重を分散しやすく、地震に強い構造になります。

住宅などでは、湿気・シロアリ対策、建物の腐食防止になるため採用されることが多いです。

布基礎

布基礎も、コンクリートで底面一帯を支えますが、鉄筋は底面を支える立ち上がり部分にしか入っていません。面ではなく、点で支えることになります。

布基礎はコンクリートの厚みも5~6cmで、ベタ基礎の15cmよりも薄くなります。コストは抑えられますが、機能性はベタ基礎よりも低くなると言えるでしょう。

独立基礎

独立基礎とは、建物の柱の下のみに施工する基礎のことです。オフィスビルやショッピングモールなど、非住宅建築物に多く採用されている基礎になります。

大規模建築での採用が多いのは、柱の下だけに施工するので、コスパが非常に高くなるからです。マンションなどでも、独立基礎が施工されますが、基礎柱と基礎柱を地中梁でつなぎ機能性を上げています。

フェンスの基礎やデッキの柱部分、玄関ポーチの柱なども独立基礎です。

杭基礎

杭基礎は、杭とフーチング(鉄筋コンクリートの躯体)で構成されます。杭とフーチングはしっかりと接合され一体化しています。

日本は、支持地盤となる層が深い位置にあることが多いので、そこまでフーチングをつくることは施工的にも経済的にも難しいのです。そのため、杭を使って支持地盤とつなぐということです。

建物の荷重、支持地盤の深さなどによって、フーチング1区画当たりの鉄筋の本数、杭の形状や規格、数量が決まってきます。

基礎工事の施工手順と重要ポイント

早朝の工事現場と重機

基礎工事の施工手順について、重要ポイントを中心に紹介します。比較的、小規模な基礎工事を想定しています。

遣り方工

遣り方は「丁張り」とも呼ばれます。基礎工事に先立って、構造物の水平の基準、位置や高さに「仮杭」を打って墨出し(位置出し)することを言います。

実際の位置より数十センチ離した場所に、貫板と呼ばれる木の板で囲うように設置します。遣り方は、必要なくなると撤去される仮設物です。

大規模な基礎工事では、必要となった都度、測量機器を使って位置出しします。

掘削工

掘削工は、根切りとも呼ばれ、建設機械で基礎の底面となる地盤まで掘りおこすことです。

ポイントは、掘削底面が平坦になっていることです。また、掘削深さは貫板に基づいて割り出し、正確に掘りおこさなければなりません。

配水管などの埋設物がある場合は、手掘り作業が必要なることもあります。

砕石敷均し工

掘削工事が完成したら、基礎となる区画に砕石を敷き均します。その後、プレートやコンパクターで転圧します。

砕石を敷き転圧することで、元地盤より硬い状態になり、コンクリート工の安定性が高まるのです。防蟻・防湿のための養生シートを布設することも多いです。

養生シートの布設後は、基礎の外周に捨てコンを打って、型枠の位置が分かるようにします。

配筋工

配筋とは、鉄筋コンクリートをつくるために鉄筋を組み立てることです。鉄筋の配置は、コンクリートの強度を決める重要な工程です。

鉄筋の本数、規格、間隔、スペーサーの素材など、すべて決められたルールがあり、最終的には現場責任者のチェックが必要になります。

型枠工

コンクリートを流し込み、成型するには、型枠が必要になります。使用されるのは、木製や鉄製の枠です。

型枠は設計図に沿って組み立てられ、組み立てが完成すると、アンカーボルトで構造物の躯体と基礎をつなぐ金属製の部材を設置します。

コンクリート工

完成した型枠にコンクリートを流し込み打設するのが、コンクリート工です。

コンクリートは、気温の高低や必要な養生期間(固化するまでの期間)で種類がありますので、適切なコンクリートを選びましょう。

特に注意したいのは、コンクリートの分離やひび割れです。アンカーボルトがコンクリート打設時に、曲がったりずれたりしていないかのチェックも必要になります。

養生期間が終わったら仕上がりを確認し、型枠を外して基礎工事の完成です。

基礎工事に必要な資格と取得方法

大型の青いクレーン

基礎工事の現場で働くために必要とされる資格は、他の土木工事と共通している資格がほとんどです。資格の種類と取得方法の概要を確認しておきましょう。

土木・建築施工管理技士

土木・建築施工管理技士には、1級と2級があり、現場管理者には必須とされている国家資格です。

まず2級に合格し、実務経験を積んで1級に挑戦するというのが一番多いパターンです。1級には、1次試験と2次試験があり、新制度では1次試験合格で「技士補」という資格を取得できるようになりました。

作業主任者

作業内容や規模によって、作業主任者という現場管理者が必要になってくる場合があります。
作業主任者の資格を取得するためには、各都道府県労働局長に登録認定された教習機関で、技能講習を受講しなければなりません。

基礎工事で必要とされる作業主任者の資格には以下のようなものがあります。

  • 地山掘削・土止支保工
  • 型枠支保工
  • 職長・安全衛生責任者

技能士

技能士とは、技能の習得レベルを評価する国家検定制度で、試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます。

基礎工事に関連する技能士には、以下の技能士があります。

型枠技能士型枠の施工
鉄筋技能士鉄筋の施工

技能講習

技能講習で取得できる資格で、作業者に必要となる資格は以下のようになります。

車両系(整地)ユンボの操縦に必要
小型移動式クレーン積載型トラッククレーンの操作・運転に必要
玉掛けクレーンで荷を吊り上げる際に吊り荷をワイヤーなどで吊るために必要

特別教育

特別教育とは、作業者を危険あるいは身体に害を及ぼす可能性のある業務につかせるときに、事業者が行わなければならない教育です。事業者は外部機関が実施する特別教育に、作業者を受講させることもできます。

特別教育によって作業できるようになる業務には、以下のようなものがあります。

締固用機械土や砕石の締固用機械の使用時に必要
振動工具締固用ランマやドリルなど振動する工具を使用する際に必要
研削砥石グラインダーなどの刃の交換時に必要
アーク溶接電気溶接時の作業に必要
ガス溶接ガス溶接の作業に必要

基礎工事 まとめ

重機のハンドルを握る職人

基礎工事をおろそかにすることは、建物の不安定につながり、そこで生活する人を危険にさらすことになります。ですから、基礎工事は、重要な土木工事と言えるのです。

基礎工事は、建物と地盤、双方の特徴や構造を反映させた設計書や設計図面に基づいた施工である必要があります。

そのために、作業に関係するすべての人が基礎の種類や施工の手順を熟知しておくことが必要です。

また、資格を取得することで仕事の幅を広げることは、あなたの評価を高め、仕事にやりがいを持つことにつながるはずです。

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